代表取締役社長 菊山嘉晴氏
取材日:2021年12月10日
2019年に6拠点を統合して新本社をリバーサイド隅田に移転するとともに、スマートワークの推進をスタートさせた株式会社キャプティ様。
コロナ禍の2020年には、リモートワーク化も本格化。当社は、2019年オフィス本社統合移転プロジェクト及び2021年ABW化プロジェクトの
両プロジェクトに伴走しました。発注者の菊山社長に、プロジェクトへの思いや成果を振り返っていただきました。
キャプティグループは、1961年に東京ガス100%子会社として設立された「株式会社関配」が前身。現在では、首都圏にエンジニア600人、協力会社300社超を配置し、都市ガスや温水の配管工事、電気工事や給排水工事、空調機器の販売や設置工事、機器メンテナンスや土木工事など都市ガス周りを中心に事業活動を行っています。2019年度からは、新たに日鉄パイプライン&エンジニアリング(株)の出資も受けています。
五反田から向島に本社を移したことを契機にICTの積極的な導入・活用を進め、「エネルギーエンジニアリング企業に相応しい新しい働き方への改革」に積極的に取り組んでいます。
自社ビル、賃貸オフィスの旧本社および都内近郊6拠点を、新たな賃貸オフィス一か所に統合したプロジェクトです。当社は、キャプティ様の「TRY ! スマートワーク」の3つの基本コンセプト(Communication<会話する>・Common<共有する>・Choice<選択する>)の下、キャプティ様プロジェクトチームとワンチームになって、仕事のしやすさはもとより、一人ひとりの専門技術や経験、情報の融合による新しい価値の創造、個々人の成長の促進などを目指して、プロジェクトを支援しました。オフィスでは社員同士が自然に交わる工夫を随所に施しています。その後、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、当社によるABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)調査によって社員各人の行動時間が定量化され、その結果、合理的な働き方を一人ひとりが意識するようになり、執務エリアのさらなる面積縮小も実現しました。
本社および主要拠点の新設に伴う基本構想、基本計画、基本設計、設備実施設計マネジメント、調達支援、施工マネジメント及びABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)調査やリモートワーク推進支援
一番の目的は、現場と本社の距離を埋め、垣根をなくすことです。
弊社は都市ガス関連の配管工事や設備工事、維持管理を主に手掛ける施工会社です。工事部門は首都圏各地域に拠点を置いていたため、管理部門からなる本社とは物理的にも心理的にも距離がありました。
そこで、本社が現場の実態を把握しやすくし、経営判断のスピードを速めるために、組織改革を行うと同時に、現場の拠点と本社機能が一緒に入れるオフィスへ移転しようと考えました。
土地・建物を自社所有していた東京・五反田の旧本社は、まさに当社のシンボルで、社歴の長い社員たちは愛着を持っていました。しかし、あえて、そこを出て新たなオフィスを構えることで、ゼロから新体制を築く決意を示すことにしたのです。
都市ガスや電力の自由化、再生可能エネルギーの普及、脱炭素社会への移行など、エネルギーをめぐる社会の動きは日々大きく変化してきています。当社もそれに応じて変化していかなければ、今以上の成長・発展はなくなります。
残念ながら本プロジェクト前の弊社は、現場の仕事の進め方自体も旧態依然でムダが多く、ほとんどデジタル化も進んでいませんでした。効率が悪いせいで労働時間は長く、優秀な社員は辞めていくし、若い人も入ってこない。人財育成も充分な時間を取れないという悪循環。施工会社は現場こそ命ですから、このままでは立ちいかなくなると大いに危機感を持ちました。
社員自らがその日その時に「最も合理的な場所」を選択でき、納得感ややりがいを感じることができるように、また、活発なコミュニケーションからの気づきや個々人の成長が促されるように、しかも、それがリモート環境のもとで実現できるように――そんな働き方のコンセプトを「TRY ! スマートワーク」というキャッチフレーズにまとめ、構造改革に着手しました。
改革にあたって、まずはプロジェクトチームをつくり、社員自ら課題をあぶり出してもらうことにしました。ここで挙げられた61項目の課題を役員会でつぶさに検証した結果、改善の必要を認めた項目に「組織の縦割りをなくす」などがありました。その原因の一つとして、オフィスのあり方が問われたのです。
つまり、本社オフィス統合移転プロジェクトは、構造改革の一環としてスタートしたわけです。
当初は外部のシェアオフィスなど社内外から就業場所を選べるようにしたものの、主に隅田オフィス内での融合に取り組んでいました。在宅勤務などはまだトライアル段階で、リモート環境の整備を急いでいたというのが実際です。そこにコロナ禍が発生し、環境整備に急がせるとともに、「事業継続」の観点から現場との直行直帰、在宅勤務など選択肢を拡大しました。偶然の結果ですが、コロナ禍前から取り組んでいたことで、パソコン等の必要機材がスムーズに用意でき、また私も含めた全員が「スマートワーク」の具体的なイメージを共有することができました。
認可条件が難しいと感じていた在宅勤務でしたが、育児や家族介護が必要な社員から安心して仕事ができ、助かったとの声をもらい、まさに「案ずるより産むが易し」です。
意外にほとんどの仕事がリモートでできることが分かりびっくりしました。実施前は、あれもこれも難しいとの意見が多かったのですが・・・。
私が特にプロジェクトメンバーやシステム担当者にお願いしたことは、「情報セキュリティ」です。都市ガスという公共のインフラに関わることからお客様の大切な情報を扱うことも少なくありません。社員がどれだけ便利になってもお客様のご信頼を裏切るようなことがあれば本末転倒です。
ただ、全員が満足する制度運用はまだまだ難しいです。特に主力メンバーである現場監督達は当たり前ですが担当する現場の場所や時間に制約されます。直行直帰や現場でデータ検索や業務報告ができるようになったとは言え、在宅勤務はなじみません。別のケアが必要だと感じています。同時に、在宅勤務等が可能な所謂内勤者の業務管理や生産性向上、勤務制度の多様化も検討が必要です。
さらに、withコロナに向けて、リアルではできていたコミュニケーションをどのようにリモートでも実現するかも大きな課題です。「オフィスで情報交換しながら仕事をしたい」という人もいます。まだまだ試行錯誤中ですが、上司と部下の1on1ミーティング、役員との交流会、職場を越えた交流イベントなどもトライアル中です。そもそもがそうした思いで、今のオフィスを作った訳ですから。
いずれにしても、私たちのスマートワークは各自が最も合理的な場所と方法を選べるようにする、ということを念頭に、今後とも働き方を進化させたいと思います。
ペーパーレス化やデジタル決裁など進め、出社する必要性をさらに減してきたので、オフィスが狭くなったとはまったく感じません。また、今回他の拠点の改修によって、全拠点が統一コンセプトのもとで働けるようになったので、よかったと思っています。
意識調査の結果によれば、「新しいやり方に取り組むことのできる喜び」を感じている人が、特に管理職に多く見られました。
他部署、他部門との連携や情報共有に対する期待感も、少しずつ高まっています。これから弊社は、工事をして終わりではなく、その後も安心してお使いいただくとともに次回もキャプティをご用命いただけるよう、エネルギーや空調に関連した様々な商材サービスをご提供していきたいと考えています。そのためには、お客様と直接お会いする営業側と現場を実現する施工側が思いを一つに絶えず緊密に連携することが必要不可欠です。そうした機運が高まってきたことも、新しいオフィスの成果だと思っています。
最近では、新しい商材やサービスを考える、さらに施工品質をあげようと部門を越えたプロジェクトも立ち上がり始めました。
社員たちと並んで座ると、見える景色が変わるし、聞こえてくる音も違います。席を移るときも社員の顔を見ながら机の間を通っていくので、皆の日常会話が耳に入る。最初は身構えていた社員たちも今ではすっかり慣れ、私のところにも「ちょっといいですか?」と気軽に来てくれるようになりました。
明豊ファシリティワークス様に多種多様なスペースをつくってもらったので、その日の仕事によって席を選べるのもいい。私は「ソロブース」やいわゆる「ファミレスブース」にいることが多いのですが、そこでパソコンを使っているのを見た若い社員から「社長も仕事するんですね」と言われたこともありますよ(笑)。とにかく、社内の風通しが格段とよくなったことを実感しています。
移転後、親会社の役員や幹部にも見学してもらいましたが、五反田からの変わりように驚き、あちこちで話題にしてくれています。また商談でいらっしゃった取引先の方々の評価も高く、社員の励みにもなっています。さらに嬉しかったのは、近隣の高校の先生方に見学いただいき、生徒さんをご推薦くださったことです。以前に比べて採用応募者数も増えています。
――菊山社長、どうもありがとうございました。