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ABW(エービーダブリュー)とは?導入のメリット、レイアウト・企業導入の取組み・事例を紹介

お役立ち情報/基礎知識2021年12月01日

ABWとは、Activity Based Working(アクティビティ・ベースド・ワーキング)の略で、目的や業務内容に合わせて、自由に働く場所や時間を選択できる働き方を指します。

ABWはコロナ禍でのリモートワークの導入や働き方改革を契機として導入する企業も多く、業務効率の向上やオフィスコスト削減などにもつながります。

この記事では、ABWの意味、フリーアドレスとの違いやレイアウトの特徴、導入のメリット、導入している企業が社内に設けているコーナー事例、ABWに合わせて導入が必要なツールや制度、実際にABWを実現したオフィスの事例などを紹介しています。

ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)とは?

ABWとは、Activity Based Working(アクティビティ・ベースド・ワーキング)の略で、目的や業務内容に合わせて、自由に働く場所や時間を選択できる働き方を指します。オランダのコンサルティング会社ベルデホーエン社が初めて実現したワークスタイルです。

ABWは大きく2つに分けられます。会社に執務席だけでなく集中用の席やリラックススペースなどのさまざまなコーナーを設け、社内に限定して執務スペースの自由度を上げるパターンと、自宅やカフェ、サテライトオフィスなどでも執務できるなど社外での活動も含んだパターンに分類されます。

働き方改革やオフィスのコスト最適化といった理由から、自由度の高い働き方であるABWを採用する企業が増えています。

ABWが注目される背景とは?

ABWが注目されている背景には、コロナ禍によるリモートワークの浸透があります。コロナ対策として多くの企業でリモートワークが実施され、結果としてコロナ禍以後もリモートワークを前提とした働き方を継続しようと考える企業が多くなっています。

それまでは原則として会社内で働くことが一般的でしたが、急速に働き方が変化したことで、オフィスの抜本的な見直しを始める企業も増加しています。


ABWのレイアウトとは?固定席・フリーアドレスなどとの働き方の違い

ABWは、広い意味では自宅やカフェなどオフィス以外の場所での執務を含みますが、オフィス内に限定して実施する場合もABWと呼ばれます。オフィスにおけるABWのレイアウトや、固定席・フリーアドレスとの違いを紹介します。

固定席やフリーアドレスなど、オフィスで用いられる代表的なレイアウトの分類

オフィスでのABWでは、少人数用のミーティングスペースや、1人で集中的に作業できるブース、ラウンジ、カフェコーナーといった多彩なスペースから気分や業務内容に合わせて選択します。

一方、固定席の場合、部署や組織構成に合わせて個人の席がレイアウトされており、自由な移動は行われません。フリーアドレスは基本的に個人の席はなく移動ができますが、移動できる範囲については部門内やフロア内などあらかじめ決められていることもあります。

ABWは単にフリーアドレスであるだけでなく、多種類の机やスペースの選択肢から目的に合わせた働き方ができることが特徴と言えます。


ABW導入・オフィス改革の4つのメリット

ABWの導入によるオフィス改革の代表的なメリットについて紹介します。

ABWは従業員にとって自由度の高い労働環境が実現するだけでなく、オフィスのコスト最適化やリクルートへの効果といった、企業全体に対するメリットも多くあります。

メリット1:コロナ禍以降のニューノーマルな働き方にフィットしやすい

ABWは、リモートワークなどに代表される、コロナ禍以降のニューノーマルな働き方にフィットしやすいワークスタイルです。

感染リスクの拡大に応じてリモートワークを採用する企業が増加し、コロナ禍以後の標準的な働き方としてリモートワークを継続しようと考える企業や、出社とリモートワークの組み合わせを検討する企業も多くなっています。

ABWは、オフィス、自宅、カフェ、サテライトオフィスなど、社外や社内のさまざまなスペースを活用するため、リモートワークを活用する度合いに合わせた運用もしやすくなっています。

メリット2:目的に合わせた環境を選択することで作業効率や生産性が高まる

ABWでは、集中したいときは1人用の集中ブースや社外のサテライトオフィス、気分転換やアイディア出しにはカフェスペース、大人数の会議には大きなミーティングテーブル、といったように業務の内容や性質に合わせて場所を選択することで、作業効率や生産性が上がります。

また、大型のホワイトボードやプロジェクターといった備品や機材を充実させることで、会議やブレストなどをより活性化できます。

メリット3:モチベーションやワークライフバランスが向上しリクルートにも効果的

ABWは働く場所や時間が選べるので、従業員のモチベーションやワークライフバランスを高める効果があります。

例えば育児や家族の状況などに合わせてテレワークが活用できるなど、従業員のワークライフバランスが高まるほか、仕事の場所や時間の自由度が上がることで仕事のモチベーションや会社に対するロイヤルティ向上にもつながります。

また、働きやすい仕組みが整った環境は働き手にとって魅力的なため、多様な人材を確保でき離職率が下がるなど、リクルートにも効果があると言えます。

メリット4:賃料や光熱費などオフィスにかかるコストを削減できる

ABWはリモートワークの活用によって必要なオフィス面積が減少することから、オフィスの賃料や光熱費などの減少も期待できます。また、レイアウトなどを見直すことから、効率的なスペースの活用や人員の増減に左右されない柔軟な運用が実現します。

その一方、ノートPCやスマートフォンの支給など追加コストもかかるため、削減できるコストと追加コストのバランスやオフィス全体のコスト最適化を考えることが重要です。


ABW導入オフィスに設けられた機能・コーナーの事例紹介

ABWを導入したオフィスには、さまざまな機能やコーナーが設けられます。機能やコーナーの代表的な事例について、写真と使い方を紹介します。


ABW導入時に検討すべきポイントとは?参考となる取組や事例

テレワークとオフィスワークのバランスや、コミュニケーションの取り方といった、ABWの導入前に検討すべき代表的なポイントについて、参考となる取り組みや事例を元に紹介します。

働く場所の選択肢やオフィスワークとテレワークのバランスの検討

ABW導入時には、まず働く場所の選択肢やオフィスでの執務とテレワークの比率などを検討します。

具体的には、原則テレワークなのか出社と組み合わせるのかなどのバランス、自宅やカフェなどリモートワークの場所の選択肢、シェアオフィスやサテライトオフィスといったスペースを社外に用意するかなどについて検討が必要となります。

働く場所については、目的に応じて使い方を整理します。以下の図では、実際の働き方を元にそれぞれの場所の使い方や必要となる機能などを整理しています。

オフィスやシェアオフィス、自宅など働き方のシーンに応じて必要となる設備などをまとめた図

カフェやシェアオフィスでの個人作業は機密に配慮が必要であることや、対面のコミュニケーションはオフィスでないと難しいなど、それぞれの特性をおさえた上で、働ける場所やリモートワークと出社のバランスを検討する必要があります。

情報共有やコミュニケーション方法の検討

ABWは、多くの人がオフィス内のさまざまな場所やオフィスの外など異なる場所にいるため、具体的な情報共有やコミュニケーションの方法を検討する必要があります。

そのためには、働く場所ごとの役割や目的をおさえておく必要があります。オフィスでは対面での打合せや日常的なコミュニケーション、シェアオフィスでは集中した個人作業やウェブ会議など、場所ごとの特性やどのようなコミュニケーションが取れるのかを確認します。

その上で、場所や時間を自由に選んで働ける環境の整備方法を検討します。具体的には、対面での会議時間の短縮、紙資料の削減、ハブオフィスやサテライトオフィスの契約などが考えられます。

ICTツールの導入・利活用

ABWでの業務には情報のやり取りや通信を行うICTツールの導入や活用が重要となります。従業員はそれぞれ異なる場所で業務していることが前提のため、連絡や相談はグループウェアやチャットツールなどを活用します。また、リモート環境のコミュニケーション不足を解消するため、バーチャル空間サービスオフィスの導入をすることもあります。

その他にも、企業間や部門間での情報共有を行うプラットフォーム、スケジューラによる予定や進行の管理、会議の日程や場所を管理できる会議予約システムなどを活用することで、ABWのスムーズな運用が可能になります。

検討項目 概要・検討イメージ

グループウェア

メールやファイル共有などがスムーズに行える。社外からもアクセスできるクラウド型が主流

チャットツール

メールよりもスピード感のあるやり取りが可能。画像や動画の共有も簡単に行える

情報共有プラットフォーム

企業間や部門間での大容量データの転送が可能。アクセス権の管理や操作履歴の閲覧といった機能もある

スケジューラ

スケジュールを共有・管理できて、会議の設定などがスムーズになる

会議予約システム

会議室の予約や空き状況の確認がスムーズにできる。利用状況の分析なども可能

ウェブ会議ツール

複数人での音声通話やビデオ通話ができる。画面共有やテキストチャットも可能な場合が多い

バーチャル空間サービス

バーチャル空間に常時接続されているため、話しかけるタイミングを掴みやすい、手軽にコミュケーションができます。

機器・備品の支給

ABWによって従業員がいつでもどこでも働ける環境を整えるためには、業務用のノートPCやスマートフォンといった機器や備品の支給も必要となります。

また、固定電話への着信を携帯電話に転送するサービスを活用することで、固定電話の電話番号はそのままでテレワークに対応することも可能です。

検討項目 概要・検討イメージ

ノートパソコンの支給

リモートワークやウェブ会議にも対応できる。セキュリティへの配慮や各種ライセンスの設定も必要

スマートフォン・携帯電話の支給

担当者がテレワーク中でも電話対応が可能になる

サブディスプレイの支給

モニターの拡張によって、PC作業が効率的になる

ヘッドセット・ウェブカメラ・マイクなどの支給

ウェブ会議がスムーズになる。ヘッドセットは周囲に会話を聞かれたくない場合にも役立つ

人事評価・勤怠管理・ワークフローなどの制度設計

ABWでは、人事評価や勤怠管理などの制度設計についても検討する必要があります。リモートワークの導入に際してペーパレス化の実施も行われるため、オフィスの制度面についても大きな変化があります。

検討項目(調べる) 概要・検討イメージ

ペーパレス業務フロー

PDFや電子印鑑を活用し承認フローを電子化することでテレワークに対応可能な体制が作れる

1on1の実施

育成やモチベーション向上を目的とした個人面談。定期的に行うことで、部下の状況を把握できる

人事・評価制度の整備

リモートワーク下での人事や評価が適正に行われるように、従来の制度の改善や新しい評価制度の導入を実施する

勤怠管理

オフィスへの入退室管理システムやテレワーク時の労働時間を可視化する勤怠管理ツールの導入で管理を効率化できる


ABWを実現したオフィス・働き方改革の事例紹介

このサイト、オフィス・働き方改革ラボの運営者である明豊ファシリティワークスが実際に支援した企業のABW導入や働き方改革の事例について紹介しています。

プロジェクトの概要やコンセプト、実現したワークスタイル、導入のポイント、効果やメリットなどをまとめており、ABWの導入についてより具体的なイメージを掴んでいただけます。

事例1:「Good Living through Good Communication」というコンセプトでABWを実現

2010年代からフリーアドレスやテレワークを実践し、スピーディな変革の中で多様な働き方を積極的に取り入れてきた、株式会社LIXIL様の事例です。

  • 分散していた拠点とグループ会社の本社への移転・統合に伴い、イノベーションを加速する様々なインフォーマルコミュニケーションを誘発する場をデザイン。
  • 打合せ、電話会議、集中/協働作業、休憩、食事、創造、お客様との対話や商品説明など、様々な業務シーンに応じたワークプレイスを用意、状況に応じて選んで働くことが出来る。
  • 個人用ロッカーを廃止して部署用キャビネットを集約、フロア構成を工夫することで、より活発なABWを促す環境をつくった。
  • 入退館管理、来客予約、会議室予約、在室、混雑状況などを確認できる独自のAMS(アクティビティ・マネジメント・システム)を導入し、働きやすさと生産性を向上させた。
  • さまざまな部署や関連会社を出来るだけオープンにゾーニングすることで、独立性とコラボレーションの両立を図った。
  • オフィススペースの随所に自社商品の住設や素材を取り入れ、働く空間の中にリビングにいるような居心地の良さを提供して、製品やサービスを身近に感じる環境を生み出している。

事例2:株式会社PHONE APPLI 様 CaMPというコンセプトでABWを実現。

株式会社PHONE APPLI様は、社員の増加とビジネス環境の変化に対応すべくオフィスにABWを導入されました。スマートフォンとノートPCがあればどこでも仕事できます。オフィスには、社員が働き方に合わせて働く場所を選択できる環境と自然と自由にコミュニケーションが生まれるような緑に囲まれた非日常なアウトドア環境を取りいれられています。テレワークとオフィスでの業務のシナジーにより、社員から最高のパフォーマンスを引き出す新しい働き方を実現されました。

ワークスタイル・コンセプトの紹介

コミュニケーション×モチベーションをより良い状態にすることでイノベーションを生み出す働き方CaMP(Communication and Motivation make Performance)がコンセプトです。オフィスを単一的な職場でなく、人と人が出会う場所として定義されています。オフィスに自然を取り込むことで、社員が気持ち良く、健康的に働いてもらいたいという想いが込められています。

株式会社PHONE APPLI 様におけるABW導入のポイント・効果

株式会社PHONE APPLI 様におけるABW導入のポイントは以下の通りです。

  1. 空間からモチベーションを向上させるために、五感を刺激する仕掛けを用意
    心地よい自然音のBGM、時間帯で変化する照明の色、オフィス内の随所に取り入れたグリーン、天然アロマの香り
  2. ITツールを活用して、あらゆるデータを可視化
    申請書類の電子化、居場所の見える化、1on1での発話量、室温/湿度の常時モニタリング
  3. 日頃の感謝を送りあえるPHONE APPLI THANKS(PHONE APPLI自社製品)を導入し、気軽なコミュニケーション、人間関係の質向上、行動・活躍の見える化
  4. オフィスをショールーム化し、年間をとしてオフィスツアーを開催することで自社製品のアピールに繋げると共に、社員が会社を誇りに思ってもらうことにつなげる
  5. キャンプ家具やキャスター付きのベンチソファ・テーブルにすることで、執務⇔イベントの可変性を持たせ、少ない面積で空間を最大限に活用した
  6. ゴミ箱や冷蔵庫、コーヒーなどのパントリー機能を1ヶ所に集約設置することで、オフィス内を綺麗に保つと同時に、集まるきっかけとなりコミュニケーションの活性化につなげた
  7. 書類は90%以上クラウド化し、キャビネットと個人ワゴンを廃止した。その代わりにPCと最小限の個人荷物が入れられる個人ロッカーを用意した

まとめ:ABWの導入は、オフィス・働き方の両方に詳しいプロに相談しよう

ABWの導入には、オフィスと働き方の両面に詳しく実績が豊富なオフィスPM会社などに相談するとスムーズです。自社の実態に合わせた実現方法を相談でき、制度設計や運用についても様々な事例・実績をベースとした実際的なサポートが受けられます。

企業がABWを導入・活用するためのポイントは以下の通りです。

  1. ABWはwithコロナにおけるニューノーマルな働き方にフィットしやすい
  2. ABWでは目的に合わせた環境を選択できるため、生産性や業務効率が向上する
  3. オフィスの面積が最適化されるので、賃料や光熱費などのコストが削減できる
  4. ABWを導入する際は、出社とリモートワークのバランスやICT機器の活用を検討する
  5. ペーパレス業務フローや勤怠管理システムの導入など制度面も大きく変化する
  6. 実際の事例を知ることで、ABWのメリットやより具体的な運用方法が理解できる

オフィス・働き方改革ラボでは、オフィス変革・働き方改革に役立つ知識の提供や、オフィス改善の事例紹介などを行っています。ぜひ、関連記事もあわせてご覧ください。

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