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オフィス移転のPM・コンサルとは?
~種類、メリット、費用などを紹介~

お役立ち情報/基礎知識2024年12月05日

オフィス移転のプロジェクトマネジメント(PM)とは、移転を円滑に完了させるための各種マネジメントのことです。新しいオフィスの計画策定(オフィスの在り方、働き方改革、コスト、スケジュール等)及びそれらの意思決定、施工会社への発注、引越しまで、その範囲は多岐にわたるため、自社での対応が難しい場合、外部の専門家(PM会社やコンサル)を活用することが有効です。

オフィス移転のマネジメント業務をPM会社・コンサルに委託することで、プロジェクト予算のコストコントロールを任せられる、ABW*¹などの新しい働き方の検討や導入のサポートを得られる、といったメリットがあります。

*¹ ABW:Activity Based Working(アクティビティ・ベースド・ワーキング)の略で、目的や業務内容に合わせて、自由に働く場所や時間を選択できる働き方

この記事では、オフィス移転時に外部から支援するPM会社・コンサルの種類、依頼するメリット、PM費用の算定方法、PM会社の選び方・選定のポイントなどを紹介しています。

オフィス移転のPM・コンサルとは?

オフィス移転のPM会社は、オフィス移転やリニューアルに対してプロジェクト全体をマネジメントしコントロールします。ビル管理会社や施工会社などプロジェクト関係者との調整、プロジェクトの進行管理、コストコントロールなどを行い、計画・設計・調達・工事・引越しといったプロジェクトの各段階で専門性を補完し、発注者の負担を軽減します。

さらに、働き方改革支援として、新しいオフィスのコンセプトや新しい働き方を実現するための施策を併走して支援する会社もあり、コロナ禍を経て拡大したテレワークや、フリーアドレス化やABWの実現、書類削減・ペーパーレス化への取組に対する支援などを受けることができます。

オフィス移転のPMは、PM会社によって得意分野や支援範囲の広さ・深さが異なるため、自社のニーズに合った依頼先を選ぶことが重要です。


オフィス移転のPM・コンサルの種類とは?

オフィス移転のPMについて、代表的な依頼先と特徴を紹介します。カテゴリーごとのポイント(特徴)をおさえておくことで、自社に合った依頼先のイメージがつかめます。

オフィス移転のPMを依頼する先としては、家具メーカーやオフィス設計・デザイン会社、不動産仲介会社などのコンサルティング部門や、特定企業の系列に属さない独立系のPM専門会社などがあります。

カテゴリー

オフィス家具メーカー系のPM・コンサル部門

オフィス設計・デザイン会社系のPM・コンサル部門

不動産仲介会社系のPM・コンサル部門

独立系のPM・コンサル会社

会社ごとに具体的なサポートの範囲や得意・不得意分野はそれぞれ異なるため、実際に依頼する際は業務の内容や詳細を確認することが重要です。


オフィス移転をPM・コンサルに依頼する4つのメリット

オフィス移転で外部のPMやコンサルタントを活用する代表的なメリットを紹介します。

オフィス移転プロジェクトは、完了までの全体像を見据えた計画の立案や進捗管理、入居ビルや施工会社との折衝、B工事とC工事を含むコストのコントロールなど専門性の高い業務が発生します。加えて、社内調整や通常業務への対応もあり、プロジェクト期間中における発注者側の担当者の負荷は大変高くなります。通常の業務への影響を最小限にしながらオフィス移転や自社に合った働き方の変革を実現する上で、オフィス移転でのPM活用は多くのメリットがあります。

メリット1:経営戦略や目指す働き方を踏まえたオフィス環境を構築できる

働き方改革支援に専門性を持つオフィス移転のPMであれば、経営環境の変化に応じた経営戦略や目指す働き方を実現できるオフィスの構築支援ができます。

最近のオフィス移転では、リモートワークやフリーアドレスを含めたABWの導入やペーパーレス化など、働き方の見直しを含めた計画が非常に増えています。場所を選ばない働き方や書類から開放されたワークフローの導入により、社員が自律的に働ける、世の中の変化に柔軟に対応できるオフィスづくりが重視されています。

建築・内装、設備やICTインフラなどに加え、働き方改革も含めた多方面に高い専門性を有するPM会社を起用することで、在りたい姿がより明確になります。それを実現するためのチェンジマネジメント(意識改革)等の支援を受けながら、目指す働き方とそれを支えるオフィス環境の構築を同時に実現することができます。

総合的な課題解決力が高いPM会社であれば、現状調査やワークスタイルの方針検討を踏まえ、実現したいオフィスを要件にまとめられます

メリット2:プロジェクト全体予算のコントロール・最適化

コストコントロールに強いオフィス移転のPMに依頼することで、プロジェクト全体の予算やコストの最適化につなげられます。

特に、プロジェクト予算の半分以上を占める場合もあるビル指定工事会社の工事(B工事)は、建築躯体や設備関連など難易度の高い工事の為、コストインパクトも大きく、予算設定とコントロールは重要な課題です。依頼前にPMの専門性や立ち位置を確認し、総合的なコストコントロールに強いPM会社を選ぶことが、適正な予算策定とコストコントロールを実現する為のポイントになります。

加えて、発注者と利益相反のない独立系のPM会社であれば、各工事会社との査定交渉も発注者側に立って進められるため、コスト縮減につながりやすいといえます。

メリット3:発注者要望を適切に発注要件に落とし込むことができる

専門知識のあるオフィス移転PMの支援を受けることで、自社に専門性や知見が少ない領域であっても、発注要件を適切かつスムーズにまとめることが期待できます。

オフィス移転では、新しい働き方を構想するコンサルタント、デザイン会社、建築内装工事会社、設備関連の工事会社、セキュリティ設備会社、AV設備会社、電話設備会社、ネットワーク配線会社、家具メーカー、引越会社など、さまざまな専門会社への発注が必要となります。

特に、拠点の拡大や統廃合、ABWの導入など、これまでの働き方やオフィス規模・性質の変化を伴うプロジェクトの場合は、現オフィスの要件を前提に発注要件をまとめられない為、一から要件を検討する必要があります。プロジェクトの計画段階で、各工事に関する内容や条件を発注者の要件としてまとめるには多岐にわたる知識と豊富な経験が必要であり、全くの未経験者が独力で実施するのはとても難易度の高い作業です。

オフィス移転のPMやコンサルタントを活用することで、複雑なプロジェクトであっても発注要件を適切にまとめることができ、具体的な計画や専門会社の選定をスムーズに進められます

メリット4:発注者のオフィス移転準備の負担を軽減

オフィス移転では、入居ビルや施工会社など外部のプロジェクト関係者の調整や様々な指示が発注者側の大きな負担となります。オフィス移転のPMを活用することで、この負担を軽減することができます。

オフィス移転では、建築・内装、電気・空調衛生設備、セキュリティ・AV・電話設備・ネットワーク配線・家具・引越しなどさまざまな工事の発注先を選定し、工事完了まで1社ごとに細かく調整し、全体的な工程管理も行っていく必要があります。

これらの専門的な業務をPMに依頼することで、発注先への連絡や調整の窓口が一本化し、発注者の負担が大幅に軽減されます。特に大規模な移転や調整が複雑なプロジェクトでは、その効果はより大きくなります。

また、基本計画、基本設計、実施設計、調達、工事、引越しなどのプロジェクトの各段階においても、専門的な知見を持つPMやコンサルタントからのサポートを受けることで、プロジェクトをスムーズに進行させることが可能です。

移転プロジェクトの全体スケジュールと主な提出物イメージ発注者は、プロジェクトの各段階で支援を得られるため、業務負担が軽減されます。

オフィス移転において発注者が手配すべき発注先(専門会社)と工事項目のイメージ

発注先 依頼イメージ

働き方改革コンサルタント

現状の働き方分析、新しい働き方のコンセプト策定、書類削減やペーパーレス化の目標策定、新しい働き方に変革するための計画策定と実行支援

デザイン会社

テストフィット、内装デザイン、レイアウト、基本計画・基本設計図書の取りまとめ

B工事会社(ビル指定の工事会社)

ビル毎のルールで指定されたビル指定工事会社で実施しなければならない設計や工事。指定される工事範囲は、ビル毎に異なるが、建築内装・電気設備・防災設備・空調衛生設備などが該当するケースが多い

C工事会社(複数社)

ビルから発注先を指定されない入居者が手配できる工事。入退室管理設備・セキュリティカメラ設備、機械警備設備、AV設備、電話設備、ネットワーク機器・配線工事、家具・引越し作業などが該当するケースが多い。B工事会社との連携も要するため、工事区分を理解して適切に手配する必要がある

工事項目 手配内容の具体例

建築・内装工事

床、壁、扉、階段、天井、造作家具等の工事

電気設備工事

照明工事、コンセント工事

防災設備工事

消火設備、警報設備

空調衛生・給排水設備工事

空調工事、水まわり工事

入退室管理設備工事

カードや生体認証による入退室を制限するシステム・設備

セキュリティカメラ設備工事

セキュリティ用のカメラ設置、記録・制御するシステム・設備

機械警備設備工事

センサー等による無人警備システム・設備

AV設備工事

映像・音響などを投影・放送するシステム・設備

電話設備工事

固定電話、携帯電話、交換機設備

ネットワーク機器・配線工事

ネットワーク利用に必要となる機器・配線

家具・備品

机・イス・収納等の既製品家具、ごみ箱、家電など

植栽

観葉植物、フェイクグリーン

各種オフィス管理システム

会議予約システム、受付システム、サイネージシステムなど

引越し

引越スケジュール作成、梱包・引越作業、家具の転用


オフィス移転のPM・コンサルの費用・算定方法とは?

オフィス移転のPMやコンサルタントの費用について、一般的な業務費の考え方や算定方法、PM起用による総コストの削減効果などを紹介します。ポイントをおさえることで、実際に依頼する際のPM費用についてイメージを掴んでいただけます。

PM・コンサルの費用は工数(人日)で算出するのが一般的

コンサルティング業務費用の計算方法は、定額報酬や成功報酬などさまざまな形式がありますが、PMの費用は人日単価をベースにした工数で算出されるのが一般的です

コンサルタントは職位や習熟度によって1日当たりの単価が異なります。コンサルタントそれぞれの人日単価に稼働日数を乗じて足し合わせたものが直接人件費となります。この直接人件費に、技術料や間接経費や諸経費を係数としてかけ合わせてPM業務料(PMフィー)が算定されます

PM業務料(PMフィー)の算定フローイメージ

  人日単価 稼働日数 係数 金額

プロジェクトマネジャー

〇〇〇〇円/日

〇日

□倍

■■■■■円

担当技術者A

〇〇〇〇円/日

〇日

□倍

■■■■■円

担当技術者B

〇〇〇〇円/日

〇日

□倍

■■■■■円

合計

 

 

 

■■■■■円

人日単価で算出する場合、工数や人員の多さがPM業務料(PMフィー)の変動要因となります。拠点集約といった複雑なプロジェクトや、働き方改革支援など、業務が広範囲にわたるプロジェクトにおいては、PM業務料(PMフィー)に対する効果はコストだけでは計れないため、PM会社選定の評価には注意が必要です。

PM業務料(PMフィー)は、解決したい業務の広さやプロジェクトの難易度、体制の厚さによって変化する

PM業務料(PMフィー)は、支援を受ける範囲、プロジェクトの難易度、PM会社の体制の厚さなどによって変動し、特に期間の長さは費用に大きく影響する傾向があります。以下は、PM業務料(PMフィー)の変動要因とその効果についてまとめた表です。

PM業務料(PMフィー)の変動要因と期待できる効果

PM業務料(PMフィー)の変動要因 概要・期待できる効果

支援範囲の広さ

  • 目指す働き方、ワークスタイル構想、デザイン、設計、調達支援、工事進捗管理、ICTインフラ構築、オフィス運用検討、チェンジマネジメントなど、幅広い業務を依頼することが可能。一方でPM支援範囲により、PM業務料(PMフィー)も変動する。
  • オフィス移転のPMが自社で各種業務に対応可能な場合、発注者からみた関係者間の窓口が一本化され、やり取りの負担が減る。

支援の深さ

  • 発注者内の内部調整などを行うインハウスPMの役割を担ったり、内部の検討会議などにも役割を決めて参加し合意形成をサポートしたりすることが可能。事務局側のタスクをどこまで依頼するかにより、PM業務料(PMフィー)も変動する。

業務期間の長さ

  • メニューの広さや深さが同じ場合、業務期間の長さ(=稼働工数)がPM業務料(PMフィー)に影響する。
  • 大規模オフィスや拠点統廃合のような複雑な移転になると、PMの支援業務期間も長くなる傾向がある。

オフィス移転のPM採用による費用削減効果を紹介

コストコントロールに強いPM会社が参画したプロジェクトでは、各工事に対してコスト最適化が実現し、PM業務料(PMフィー)以上の費用対効果が生まれることもあります。


オフィス移転のPM会社の選び方・選定のポイントとは?

オフィス移転のPM会社を選定する際にはどのような点や考え方が重要になるのでしょうか?こちらではPMやコンサルタントを選定する際に重要となる、代表的なポイントを紹介します。

また、PM選定についてより具体的に知りたい方は、PM会社への声掛けから全体の流れや選定時の評価方法などが掴める実践的な資料が以下のバナーよりダウンロードいただけます。

資料ダウンロード

ポイント1:PMとしての事業モデルや得意分野を理解したうえで発注する

PMを依頼する際は、その会社の事業モデルや得意分野、立ち位置を理解することが重要です。オフィス移転のPMにはさまざまな会社があり、メイン事業に付随する形でPM・コンサルティングを行っている事業モデルの会社も多くあります。

PMの主要事業によっては、価格交渉の際にビル側への価格交渉が効きにくい、公平・公正な条件設定による入札支援が難しい工種がでるなど、発注者の要望と合致しない場合もあるため注意が必要です

また、会社ごとに得意分野が異なるため、事前に各社の強みを確認して、解決したい内容に合ったPM会社を選定することが重要になります。

評価の際には、各分野の専門家や有資格者の在籍数、働き方改革への対応可否、原状回復支援などまでを含めたプロジェクトのマネジメント力や、価格交渉等のコストコントロール力といった課題解決能力を評価することで、自社の課題に総合的に対応できるPMを選定できます。

ポイント2:体制やアサインされているメンバーの実績を加味して評価する

オフィス移転のPMを選定する際は、会社だけでなく担当するメンバーも非常に重要な要素となります。プロジェクトに実際にアサインされるメンバーの実績や担当者との相性なども確認した上で、安心して自社のプロジェクトを任せることができるかを判断することが大切です。

業務提案の際の体制図などから、プロジェクトに必要な専門家を含めてチームを組んでいるか、チームメンバーそれぞれに実績があるかといった点で評価することが重要です

また、プレゼンテーションなどの機会があれば、実際にアサインされるメンバーを確認してみることをおすすめします。

業務実施体制(例)プロジェクト体制図や担当者経歴を確認することで、チームの専門性の高さやメンバーの実績を把握できます

ポイント3:プロジェクトの難易度・規模に対して、同種の実績を有しているか

オフィス移転プロジェクトは移転の目的・取組み施策・規模・ビル特性などにより難易度は大きく異なります。自社のプロジェクトと類似した規模や内容の実績を持っているかを確認することはとても大切で、自社のプロジェクトに適しているか否かを見極める重要な判断材料となります。

サービスメニューや実績などから、業務範囲や自社の規模や課題が近いプロジェクトの実績を確認し、依頼したい内容に適合する会社なのかを判断することが必要となります

PMとしての具体的な業務を確認することで、自社のプロジェクトに対する適性を判断できます。また、大きなコストがかかる設備についても、設計やマネジメントの対応可能範囲かを確認する必要があります。

ポイント4:PM業務料(PMフィー)だけでなく、プロジェクト予算全体のコストコントロール力を踏まえて評価する

PMフィー自体が安くとも、プロジェクトおけるコストマネジメント手法が不明確な場合、プロジェクト全体コストでは、コストミニマムとならないケースもあります。

PMを選ぶ際は、PM業務料(PMフィー)だけを比較するのでなく、具体的な業務内容や体制、実績、コストコントロール力や交渉力も踏まえて判断することが重要です。


まとめ:オフィス移転PM・コンサル会社を活用し、オフィス移転プロジェクトの成功につなげましょう

オフィスや働き方に詳しく、実績が豊富なオフィス移転PM会社に相談することで、スムーズかつ費用対効果の高いオフィス移転が実現できます。自社の実態に合わせた実現方法を相談でき、新しい働き方の構想を含めたさまざまな事例・実績をベースにした実際的なサポートが受けられます。PM会社を選ぶ際は、PM会社の提案内容から具体的な業務内容・業務範囲、体制、実績、コストコントロール力、PM費用などを総合的に勘案して判断するのが重要です。

オフィス移転でPM・コンサルタントを活用するためのポイントは以下の通りです

  1. PM会社の事業モデルによっては、不得意分野や価格交渉が効かない領域があるので、自社の課題に合ったPM会社を選択することが重要
  2. 体制やアサインされているメンバーの実績を確認することで、実際に対応力があるか判断できる
  3. 自社のプロジェクトに近い難易度・規模の実績を確認することで、必要な課題解決力があるか判断できる
  4. プロジェクト予算全体のコストコントロール力を評価することで、PM費用以上のコスト削減効果が見込める。

オフィス・働き方改革ラボでは、オフィス移転・働き方改革に役立つ知識の提供や、オフィス改善の事例紹介などを行っています。ぜひ、関連記事もあわせてご覧ください。

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