オフィスデザインとは、オフィスの移転やリニューアルに伴う計画から設計までのさまざまな活動を全般的に指し、現状調査、要件定義、コンセプト策定、内装デザイン、設備設計などのほか、働き方の検討なども含まれます。
オフィスデザインは、リモートワークや働き方改革が加速すると共に、その検討範囲も広がっています。目的や意図を明確にしたオフィスデザインを導入することで、社内外への企業メッセージの発信やリクルーティングへの貢献など多面的な効果が得られます。
この記事では、オフィスデザインの内容・範囲、メリット、相談・依頼先、オフィスデザイナーの選定方法、オフィスデザイナーの役割や業務内容などのほか実際のオフィス移転事例などを網羅的に紹介します。
オフィスデザインとは、オフィスの移転やリニューアルに伴う計画から設計までの活動全般を指し、現状調査、要件定義、コンセプト策定、意匠デザイン、設備設計などのほか、働き方の検討なども含まれます。
オフィスデザインの工夫によりオフィスの目的や意図を明確にするため、経営者のメッセージをオフィスで体現できる、従業員満足度や業務効率が向上する、リクルーティングへの効果といったメリットが得られます。
また、最近のオフィスデザインでは、リモートワークやデジタル化による働き方の変化などを踏まえて計画されるケースが主流となっています。
リモートワークとオフィス勤務のバランスにより、働き方やICTインフラ再構築など、オフィスデザインを検討する際の前提条件も変化しています。
例えば、ABW*¹のような考え方では働く場所を社内に限定せず、自宅やシェアオフィスも働く場所として含めるケースが増加しているなど、オフィスデザインのトレンドは変化しています。
オフィスデザイン範囲や対象が拡大し、対応力のあるオフィスデザイナーを選択することが、目指す働き方とオフィスを実現する上で重要になっています。
*¹ ABW:Activity Based Working(アクティビティ・ベースド・ワーキング)の略で、目的や業務内容に合わせて、自由に働く場所や時間を選択できる働き方
企業がオフィスの目的や意図を明確にするためオフィスデザインを活用することは、さまざまなメリットがあります。こちらではオフィスデザインによる主なメリットや効果を紹介します。
オフィスデザインの影響は業務効率やリクルーティングなど多方面にわたりますが、ポイントをおさえることで効果・メリットを最大化できます。
オフィスデザインによって、企業として働き方変革に取り組んでいる姿勢や、経営戦略・メッセージを体現するためのオフィスが実現できます。
経営者の思いや事業戦略等を踏まえながら、社員にとって働きやすいオフィス環境を構築することで、会社全体に意識の変化が浸透する効果が得られます。また、オフィスデザインの効果を高めると共に社員の意識の変化を促す取り組みの1つとして、社員を巻き込んだワークショップ形式による目指す働き方の構想や、新しい働き方の周知や研修といったチェンジマネジメント活動を実施する事例も増えつつあります。
オフィスの快適性や働きやすさを向上させることで、社員の満足度や生産性の向上にもつなげることができます。
例えば、執務スペースやコミュケーションスペースは社員同士の偶発的な出会いや部門間のコミュケーション強化を、ミーティングスペースはスペース効率や会議の効率化を狙って、配置や仕様を検討します。また近年では、集中できる執務環境だけなく、植栽やリラックススペース、食堂などを配置しWell-beingを高めるオフィス環境をつくることも重要視されています。
このように、組織に適した働き方や業務スタイルを考慮した仕事への効率性を高める視点だけなく、過ごしやすいオフィス環境を併せて作ることで、会社へのロイヤルティまたは帰属意識や従業員定着率を向上させるなど、様々な視点で検討することが増えています。
オフィスデザインにおける先進的な工夫や従業員への配慮といった取り組みが周知され、企業としてのイメージやブランド力が向上することで、結果として採用応募者が増加するといったリクルーティングへの効果が期待できます。
快適なオフィス空間や働きやすさに配慮された環境や仕組みが整備されていることは、働き手にとって大きな魅力の一つです。そのため、コーポレートサイトに写真を掲載する、オフィス見学を企画するといった方法でオフィスの魅力をアピールしている企業も多くあります。
働きやすさや快適性に配慮され、目的や意図をもってデザインされたオフィスは企業のブランド力を高められるだけでなく、採用応募者へのアピールやリクルーティングにも活用できます。
近年のオフィスデザインでは、テレワークの導入や、出社する人数の増加・減少に合わせたオフィス面積の最適化だけでなく、ウェルビーイングやサステナビリティなどの観点も重視され、どのようなオフィスと働き方が自社に最適なのかを社員が中心となって見直すケースも増えています。
例えば、ワークショップやオフィス見学などを通じて、社員を巻き込みながら議論し、目指す働き方をイメージしていきます。
オフィスデザインについて相談できる代表的な依頼先をカテゴリごとに紹介します。
内装デザイン会社やオフィス家具メーカーなどオフィスデザインの依頼先について、それぞれの強みや特徴をまとめています。カテゴリごとの特徴をおさえることで、自社に合った依頼先を選択できます。
カテゴリ |
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オフィス家具メーカー |
内装デザイン会社 |
内装工事会社 |
オフィスPM会社 |
会社ごとに具体的な設計・デザインの範囲や専門分野が異なるため、依頼する際は対応可能な業務の内容や詳細を確認することが重要です。
オフィスデザイナーの代表的な選定方法・選び方について、概要やメリット・デメリットを紹介します。PM会社としてデザイナーの選定支援を行ってきた明豊FWの立場から、オフィスデザイナー選定のポイントをまとめています。
オフィスデザイナーの選定には、複数のデザイン提案を受けて選定するデザインコンペ方式、実績や設計体制などから選定するプロポーザル方式、特定の会社を指名する特命方式などのほか、PM会社や内装工事会社にデザインまで一括で依頼する方法などがあります。
しかしいずれの選定方法も、概算コストについては工事範囲によって各社得意不得意があります。その点については、コスト面での比較や判断において留意が必要です。
選定方式 | メリット | デメリット |
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デザインコンペ方式 |
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プロポーザル方式 |
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特命方式 |
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工事をあわせて依頼する方式 |
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PM業務とあわせて依頼する方式 |
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デザインコンペ方式は、オフィスのデザイン案を複数の会社から募り、自社に合ったデザイン案を選ぶ方式です。
具体的な複数のデザイン案から選択できるため、完成イメージが掴みやすく、また、そのデザインに紐づく費用やスケジュールが提示されるので意思決定しやすいというメリットがあります。一方、デザイン提案依頼の前提条件・要件が明確でない場合は、異なる解釈に基づく複数のデザイン案を同列に比較することができなくなり、選定がかえって困難になってしまうこともあります。デザインコンペを開催する場合、発注者はコンペ開催前に発注者要件を適切にまとめる必要があるため準備の負担が大きくなりがちです。同様に、デザイン提案を行う参加者にとっても具体的なデザイン提案の準備のため負担が大きくなり、発注者・参加者双方に高い負荷がかかる方式といえます。
また、デザインコンペ方式では選定や準備に時間がかかり、また選定後にデザインの修正やコストの見直しが発生することから、選定後の設計やコスト調整の期間が短くなってしまう場合や、概算コストについては工事範囲によって各社得意不得意(できるできない)があるため、コスト面での比較や判断は注意が必要です。
プロポーザル方式は、複数のデザイン会社やデザイナーから、設計体制、実績、具体的な進め方を比較できる資料を提出してもらい、自社のプロジェクトに合った設計者を選択する方法です。
選定における発注者の負担が比較的少ないことや、選定時の期間が短いといったメリットがあります。一方、選定や評価の基準を明確にして選定しないと、目的に合ったデザイナーが選べないケースもあります。
また、プロポーザル方式は、プロポーザルの実施後に設計要件やデザインをまとめていくため、各段階の期間を十分確保しておく必要があります。
特命方式とは、特定のデザイン会社やデザイナーを指名して設計を依頼する方法です。プロジェクト開始以前に発注者側のグループ内でデザイナーの指定がある場合、過去実績に基づき依頼するデザイナーが既に決まっている場合などが特命方式に該当します。
プロジェクトの要件定義やコストコントロールがデザイナーの力量に左右される点に注意が必要です。
また、デザインコンペ方式やプロポーザル方式のような選定プロセスが不要なため、選定スケジュールを短縮でき、設計やコスト調整の期間に余裕が生まれます。
一般的なオフィスデザイナーの役割や業務内容のうち、代表的なものを紹介します。
オフィスデザイナーの業務範囲は広く、会社によって得意分野も異なります。ここでは一般的なオフィスデザイナーの業務内容について紹介します。
オフィスデザインに先立ち、調査・現状把握を行い、現在のオフィス状況や課題を明確にします。多くの場合、現在使用している執務席やキャビネットなどの備品の数などを把握するほか、アンケートやヒアリングを通してオフィス移転やリニューアルの目的や現在課題と感じている部分の確認などを行います。
オフィスの規模が大きい場合や働き方改革を並行して検討している場合などはプロジェクトの検討項目が多くなる傾向があるため、調査・現状把握は重要となります。
オフィスデザイナーの業務には、働き方やオフィスのコンセプト策定支援も含まれます。まず目指す働き方を検討し、それを実現するためのオフィスとはどのようなものか、という順番でアプローチし、具体的な働き方やオフィスデザインの方向性を固めます。
例えば、オフィスだけでなく、自宅やシェアオフィスを利用する分散型の働き方をベースとしつつ、社員間のつながりや情報共有は今まで以上に活性化させていきたい、自分のパフォーマンスを最大化するための方法を一人一人が考えて実践できる、社員同士が仲間意識をもって創造力を高めあうことができるなど、求める働き方をコンセプトとしてまとめ、実際のオフィスに落とし込む上での方針として整理します。
オフィスデザインの初期段階では、オフィスの移転先検討のためのテストフィットやイメージを固める目的で事例写真やCG・パースを活用します。
テストフィットとは移転を検討している物件の平面図にデスクやキャビネットなどを仮でレイアウトすることで、移転先の規模の検討などに用いられます。CGやパースは具体的な完成イメージをつかむためのもので、空間の奥行きや立体感などを表現した画像です。
企業の意思決定にも役立つ資料になります。
基本計画書と基本設計書は、プロジェクト計画段階で発注者の要求内容を明文化し、発注者社内の合意形成を目的とした資料です。基本計画・基本設計に基づき概算コストや全体スケジュールを具体化しプロジェクトのゴールを明確にします。
基本計画では、コンセプトやテストフィットでの検討を受け、レイアウトやデザインイメージ、電気・空調・セキュリティ・AV・ICTなどの計画方針など具体的な設計のベースとなる計画を策定します。基本設計は、基本計画で整理した要件を設計図にまとめ、ビル側に発注者側の要求を伝え、実施設計への着手やB工事の見積作成に移行していきます。この際、基本設計図書の内容が不十分だと、B工事の見積もリスクをみて高い見積提出される可能性があるため、細部に至るまで検討がされていて図示されていることが重要となります。
基本計画・基本設計段階で予算を超過する恐れがある場合は、VE※などを検討して予算内で実現可能な計画内容に調整します。
※VE(バリューエンジニアリング)とは、製造業やサービス業、建設プロジェクトなどで広く用いられる手法で、製品やサービスの品質や機能といった「価値」を維持したままコストを低減することを指します。
富士フイルムグループのシナジー創出と働き方改革の促進を目的とし、7拠点に分散していたグループ8社を集約したオフィスです。総従業員2,100名が約4,800坪オフィスに移転しました。(面積は移転前比較で▲27%)
各フロアへの共通機能配置とビルの構造に合わせたグリッドでレイアウトする"グランドルール"を採用することで、オフィス全体に統一感を持たせつつ、8社ごとに自由設計を可能にし、それぞれの働き方に合わせたABW(Activity Based Working)*を実現しています。
* ABW:仕事の内容や目的に応じて働く場所や環境を選択する働き方。
* VE(バリューエンジニアリング): 製品やサービスの品質や機能を維持しながら、コストを削減する手法。CD(コストダウン): 材料費や施工費の削減に重点を置いた直接的なコスト削減手法。
オフィスコンセプト
多種多様な人、職種、働き方が集結し、活発なコミュニケーションが内外の繋がりを拡げ相乗効果を生み出す場としてオフィスコンセプト「FACEs」を策定し、オリジナルロゴとして共有
関係会社8社を終結しシナジーを発揮
オフィスコンセプトに全職種の働き方に対応したオフィス環境を構築するメッセージを含め、会社の垣根を超えたコミュニケーション活性化とエンゲージメント向上を推進
エントランス
富士フイルムグループのホスピタリティを体感いただける総合受付。サイネージによるブランド発信や、香り・植栽を設置してお客様をおもてなし
オフィスコンシェルジュ
機器系のトラブル等のオフィスに関する困りごとやイベント開催・調整など、様々なユーザーサポートを行うグループ8社共通の相談窓口を設置
ラウンジ
オフィスコンセプトを表現する象徴的な場として「FACEs」の頭文字をつかった「F's Lounge」はランチや一人での作業、打合せ、懇親会やイベントまで幅広く使える多目的スペースとなっており、新しい働き方を体感することができる
オフィスエリア
中央のワークラウンジを起点に什器タイプを組合せ、多彩なレイアウト構成を実現。グリッド毎にタイプ分けをして設計することで入居する関係会社のニーズに応えながらも、将来的な変化への柔軟性とファシリティ管理面での効率化を実現
オフィスデザインを工夫することでオフィス移転・改装によるメリットを最大化できます。
企業がオフィスデザインでメリットを最大化するためのポイントは以下の通りです。
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